難易度 ★★★☆
症例
54歳女性。エアロビクスの後に始まり1時間以上続いている動悸を訴え、病院を受診した。過去にも動悸があったが、数分後には自然に治まっていた。脈拍が148bpmで規則的である以外は異常はなかった。心電図検査を行った(心電図A)。頸動脈洞マッサージを行いながら心電図(心電図B)を記録すると、心拍数が低下した。
12誘導心電図


この心電図の診断は?
○ A:心房粗動
○ B:心房頻拍
○ C:房室結節回帰性頻拍
○ D:房室回帰性頻拍
正解 C:房室結節回帰性頻拍
この心電図のポイント
逆行性P波を見極める
解説
心電図Aは148bpmの規則的なリズムを示しています。QRS波は正常な持続時間(0.08秒)と正常な形態を示しています。I誘導とaVF誘導で陽性のQRS波であり電気軸は0°から+90°の間で正常です。QT/QTc間隔は正常です(280/440ミリ秒)。

V2のS波が33mmで、V5のR波が18mmで、QRS波の振幅が増加しています。SV2+RV5=51mmは、左室肥大の基準(SV2+RV5 ≥35mm)の1つを満たしています。

I、II、aVL、aVF、およびV3からV6にST-T波の変化があり、ST低下・陰性T波が見られます。これらの変化は、左室肥大(心内膜下虚血と一致する再分極異常)または急速な心拍数による心内膜下虚血の発症に関連している可能性があります。

QRS波の前後に明らかなP波は認められません。しかし、QRS波の終末部に小さな陽性波形が重なってており、これはV1誘導で最もよく観察されます。これはR’波を表している可能性もあれば、P波である可能性もあります。これが重なったP波であるかどうかにかかわらず、明確なP波が認められないため、このリズムはno RP頻拍と呼ばれます。このタイプの頻拍の最も可能性の高い原因は、典型的な房室結節リエントリー性頻拍です。

頸動脈洞マッサージ中に記録された心電図Bはこの頻拍の停止を示しています。最初の6つのQRS波は規則的で、心拍数は148bpmです。 QRS波は心電図AのQRS波と同じ持続時間、形態、軸、およびQT/QTc間隔を有しています。これはno RP頻拍であり、心電図Aに見られる不整脈と同一です。頻脈は6番目のQRS波の後に突然停止します。

頻拍停止後の最初のQRS波(7番目)の前にはP波があります。10番目のQRS波は期外収縮であり、7番目のQRS波と同じP波形とPR間隔を有しています。したがって、これらは心房期外収縮です。残りのQRS波はレート95bpmで規則的です。これらのQRS波の前には一定のPR間隔(0.16秒)を持つP波があり、P波は期外収縮のP波とは異なる形を有しており、これらは洞調律による収縮です。

頻脈中のQRS波の終末には陽性波があり、これは洞調律時のQRS波には見られません。したがって、これはQRS波に重なった逆行性P波である可能性が高いことを示しています。

したがって、頻脈は非伝導性P波で停止しています。これは、房室結節から発生する頻拍、またはリエントリー回路の一部として房室結節を必要とする頻拍、すなわち、房室接合部頻拍、房室結節回帰性頻拍、または房室回帰性頻拍の停止様式です。これは、心電図Aの頻脈が典型的な房室結節回帰性頻拍であり、QRS波の前後に明確なP波が見られない最も一般的な頻拍であることを裏付けています。

房室結節回帰性頻拍は、房室結節に2つの伝導路が存在することによって生じます。すなわち、不応期が短い遅伝導路と、不応期が長い速伝導路です。典型的な房室結節性頻拍では、心室への順行性伝導は遅伝導路を介して行われ、心房への逆行性伝導は速伝導路を介して行われます。

その結果、心房と心室がほとんど同時に興奮するため、QRS波の前後に明らかなP波が現れないことが多いです。この症例では逆行性P波は同時に現れますがQRS波の終末に重なっているのが確認できます。
参考文献
ECG Challenge: June 9, 2015. Circulation. 2015 Jun 9;131(23):2092.
ECG Response: June 16, 2015. Circulation. 2015 Jun 16;131(24):2159-60.
