難易度 ★☆☆☆
症例
68歳男性。高血圧で通院中。定期受診時に心電図を記録したところ、異常を指摘された。
12誘導心電図

この心電図の診断は?
○ A:右脚ブロック
○ B:左脚ブロック
○ C:左室肥大
○ D:心室期外収縮
正解 B:左脚ブロック
この心電図のポイント
V1、V6誘導の波形
解説
この心電図では、QRS幅が120ms以上に延長しており、V1では幅広い陰性のQRS(QS型)、I・aVL・V5・V6では幅広い陽性R波を認めます。これは左脚ブロックに典型的な所見です。

左脚ブロックの代表的な心電図所見は、
- QRS幅 ≥120ms
- V1でQS型またはrS型を呈し、QRSは主に陰性
- I、aVL、V5、V6で幅広いR波
- 左側胸部誘導のR波にはノッチやスラーを認める
- I、V5、V6では通常q波を認めない
- ST-TはQRSの方向と反対方向を向く
正常では、心室への刺激は右脚と左脚を通って左右の心室へほぼ同時に伝わります。

左脚ブロックでは左脚を介した刺激伝導が障害されるため、まず右室側が興奮し、その後、刺激が心筋を介して右室側から左室側へゆっくり伝わります。

そのため左室の興奮が遅れ、左室方向への脱分極ベクトルが遅れて長く続くことになります。結果として、左室側を見ているI、aVL、V5、V6では幅広い大きなR波となり、反対側のV1では深く幅広い陰性QRSとなります。
また、正常では心室中隔は左→右へ興奮するため、I、V5、V6には小さなq波(septal q wave)がみられることがあります。しかし左脚ブロックでは中隔興奮の順序が変化するため、この正常な中隔性q波が消失することも重要な特徴です。
さらに、この心電図ではQRSの向きとST-Tの向きが反対になっている部分が目立ちます。これは左脚ブロックに伴う二次性ST-T変化です。たとえばV1〜V3では主に陰性のQRSに対してST-Tが陽性方向、I・aVL・V5・V6では大きな陽性QRSに対してST-Tが陰性方向を向いています。
他の選択肢が違う理由
A:右脚ブロック
右脚ブロックでは、V1〜V2にrsR′、rSR′などの終末陽性成分(R′)が現れ、I・V6には幅広い終末S波を認めるのが典型です。今回の波形は逆で、V1が主に陰性、I・V5・V6が大きな陽性QRSとなっているため左脚ブロックを考えます。
C:左室肥大
左室肥大でもV1の深いS波やV5〜V6の高いR波を認めることがあります。しかし、この心電図では単なる高電位ではなく、著明なQRS幅の延長と幅広いQRS形態を認めています。したがって左室肥大だけでは説明できず、まず左脚ブロックと判断します。
D:心室期外収縮
心室期外収縮では、基本調律より早いタイミングで幅広いQRSが出現します。今回の心電図では、幅広いQRSが連続して同じ形態で規則的に出現しており、単発の期外収縮ではありません。
