難易度 ★☆☆☆
症例
72歳男性。動悸を主訴に来院。
12誘導心電図

この心電図の診断は?
○ A:1度房室ブロック
○ B:2度房室ブロック(モビッツII型)
○ C:2度房室ブロック(ウェンケバッハ型)
○ D:3度房室ブロック(完全房室ブロック)
正解 C:2度房室ブロック(ウェンケバッハ型)
この心電図のポイント
① PQ間隔の延長
② QRS波の脱落
解説
この心電図では、PQ間隔(PR間隔)が徐々に延長した後、P波に続くQRS波が脱落する現象が認められます。これは、第2度房室ブロックの一種であるウェンケバッハ型(Mobitz I型)に特徴的な所見です。
① PQ間隔の漸増とQRS波の脱落
ウェンケバッハ型第2度房室ブロックでは、心房から心室への興奮伝導が徐々に遅延し、最終的に1回の心房興奮が心室へ伝導しなくなります。
本例では、下段のII誘導のリズムストリップを観察すると、QRS波に先行するP波が確認でき、PQ間隔が徐々に延長した後、P波に続くQRS波が脱落しています。その後、PQ間隔が短縮して房室伝導が再開するという周期的な変化が認められます。
このように、PQ間隔の漸増 → QRS波の脱落 → PQ間隔の短縮を繰り返す現象をウェンケバッハ周期(Wenckebach periodicity)と呼びます。
② RR間隔の特徴
典型的なウェンケバッハ周期では、PQ間隔が徐々に延長する一方、その延長幅は次第に小さくなることが多いため、QRS波が脱落するまでのRR間隔は徐々に短縮する傾向があります。
また、QRS波が脱落した際にはRR間隔が延長しますが、通常、その休止期は基本となるPP間隔の2倍よりも短くなります。
ただし、これらのRR間隔の変化は必ずしもすべての症例で認められるわけではなく、診断ではPQ間隔とP波・QRS波の関係を確認することが重要です。
③ ウェンケバッハ型が生じる機序
ウェンケバッハ型第2度房室ブロックは、主に房室結節における伝導遅延によって生じます。
房室結節では、連続して興奮が伝わる際に伝導時間が徐々に延長し、最終的に興奮が伝導できなくなることがあります。
その後、伝導が途絶えた間に房室結節の伝導能が回復するため、次の心房興奮は比較的短いPQ間隔で心室へ伝導します。
この過程が周期的に繰り返されることで、特徴的なウェンケバッハ周期が形成されます。
なお、ウェンケバッハ型は房室結節内で生じることが多いものの、まれにヒス束内やヒス束以下でも生じることがあります。
他の選択肢が違う理由
A:第1度房室ブロック
第1度房室ブロックは、PQ間隔が0.20秒を超えて延長するものの、すべてのP波が心室へ伝導する状態です。本例ではQRS波の脱落を認めるため、第1度房室ブロックではありません。
B. 第2度房室ブロック(モビッツII型)
モビッツII型では、PQ間隔が一定のまま、突然QRS波が脱落します。一方、本例ではPQ間隔が徐々に延長した後にQRS波が脱落するため、ウェンケバッハ型と判断します。
D. 第3度房室ブロック(完全房室ブロック)
完全房室ブロックでは、心房から心室への興奮がまったく伝導しないため、P波とQRS波が互いに独立して出現する房室解離を認めます。本例ではP波とQRS波の間に一定の伝導関係が保たれており、完全房室ブロックではありません。
