問題No.32

難易度 ★★☆☆ 

症例

66歳男性。胸部違和感を主訴に来院。

12誘導心電図

問題No.32

この心電図の診断は?

○ A:洞停止
○ B:第2度房室ブロック(モビッツII型)
○ C:第2度房室ブロック(ウェンケバッハ型)
○ D:完全房室ブロック

正解 C:第2度房室ブロック(ウェンケバッハ型)

この心電図のポイント

① PQ間隔の延長
② QRS波の脱落

解説

この心電図では、PQ間隔(PR間隔)が徐々に延長した後にQRS波が脱落し、その後PQ間隔が短縮して房室伝導が再開する所見が認められます。これは第2度房室ブロックの一種であるウェンケバッハ型(Mobitz I型)に特徴的な所見です。

ただし、本例では基線に細かな揺れやノイズが混入しており、P波の同定が難しくなっています。そのため、通常のウェンケバッハ型と比較して、やや診断が難しい心電図です。

① PQ間隔の漸増とQRS波の脱落

ウェンケバッハ型第2度房室ブロックでは、心房から心室への興奮伝導が徐々に遅延することで、PQ間隔が段階的に延長します。

その後、心房からの興奮が心室へ伝導しなくなり、P波に続くQRS波が脱落します。脱落後は房室伝導が回復し、PQ間隔が短縮した状態から再び伝導が始まります。

本例でも、II誘導のリズムストリップにおいてQRS波の出現間隔が周期的に変化しており、ウェンケバッハ周期を示唆する所見が認められます。

ただし、P波の一部がアーチファクトに隠れているため、PQ間隔の変化をすべての拍で明瞭に確認することは困難です。RR間隔の変化だけで確定するのではなく、確認できるP波とQRS波の関係を組み合わせて判断することが重要です。

② アーチファクトによってP波の判別が難しい

本例の大きな特徴は、四肢誘導を中心に基線の細かな揺れが認められることです。

アーチファクトとは、心臓の電気活動とは無関係に心電図へ混入する電気的なノイズや波形のことです。筋電図の混入、体動、電極の接触不良などが原因となります。

本例では、I、II、aVR、aVL、aVF誘導などで細かな不規則な波形が認められ、P波との区別が難しくなっています。

特に、ウェンケバッハ型第2度房室ブロックの診断には、PQ間隔の変化と非伝導性P波の確認が必要であるため、アーチファクトの存在は診断を難しくする要因となります。

このような場合には、複数の誘導を比較し、同じタイミングで出現するP波を探すことが有用です。

心房興奮に由来するP波は複数の誘導で時間的に一致して出現しますが、アーチファクトは誘導によって程度や形態が異なることがあります。

ただし、アーチファクトも複数誘導に同時に現れることがあるため、時間的一致だけでP波と断定しないよう注意が必要です。

③ RR間隔の変化からウェンケバッハ周期を疑う

ウェンケバッハ型では、典型的にはPQ間隔が徐々に延長し、その延長幅が次第に小さくなることで、QRS波が脱落するまでのRR間隔が徐々に短縮します。

そして、QRS波の脱落によって長いRR間隔が形成されます。

本例でも、比較的短いRR間隔が続いた後に長いRR間隔が出現する部分があり、ウェンケバッハ周期を疑う手がかりとなります。

ただし、RR間隔の周期的な変化は洞房ブロックや洞停止などでも認められることがあるため、RR間隔の変化だけでウェンケバッハ型と診断することはできません。

④ ウェンケバッハ型の発生機序

ウェンケバッハ型第2度房室ブロックは、主に房室結節で生じる伝導障害です。

連続する心房興奮に対して房室結節の伝導時間が徐々に延長し、最終的に興奮が心室へ伝わらなくなります。

その後、伝導が途絶えた間に房室結節の伝導能が回復するため、次の心房興奮は比較的短いPQ間隔で心室へ伝導します。

この過程が繰り返されることで、特徴的なウェンケバッハ周期が形成されます。

他の選択肢が違う理由

A:洞停止

洞停止では、洞結節からの興奮が一時的に発生しなくなるため、P波とそれに続くQRS波がともに欠如します。一方、ウェンケバッハ型では心房興奮が発生しているにもかかわらず、心室へ伝導しないことでQRS波が脱落します。本例ではアーチファクトによってP波の判別が難しいものの、周期的な房室伝導障害が疑われるため、洞停止よりもウェンケバッハ型が考えられます。

B:第2度房室ブロック(モビッツII型)

モビッツII型では、伝導するP波のPQ間隔が一定のまま、突然QRS波が脱落します。ウェンケバッハ型ではPQ間隔が徐々に延長した後にQRS波が脱落することが特徴です。本例ではウェンケバッハ型を示唆する周期的なRR間隔の変化が認められます。

D:完全房室ブロック

完全房室ブロックでは、心房から心室への興奮がまったく伝導せず、P波とQRS波が独立して出現する房室解離を認めます。本例では周期的な房室伝導が示唆されるため、完全房室ブロックは考えにくい所見です。

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