難易度 ★☆☆☆
症例
58歳男性。健康診断で脈の乱れを指摘された。自覚症状はない。
12誘導心電図

この心電図の診断は?
○ A:心房期外収縮
○ B:心室期外収縮
○ C:心室性二段脈
○ D:2度房室ブロック
正解 B:心室期外収縮
この心電図のポイント
① 予定より早く出現する
② 直前に明瞭なP波がない
③ QRS幅が広く、正常QRSと形が異なる
解説
本心電図では、基本調律は洞調律ですが、その途中に予定された洞収縮よりも早いタイミングで、幅広く大きく変形したQRS波が出現しています。
この異常なQRS波は正常時のQRS波とは形態が大きく異なり、その直前に明瞭なP波を認めません。このように、心室内から予定より早く興奮が発生するものを心室期外収縮といいます。
PVCでは興奮がHis-Purkinje系を正常な順序で伝わるのではなく、心室筋から周囲の心筋へ広がります。そのため心室全体の脱分極に時間がかかり、一般にQRS幅は120ms以上と幅広く、正常QRSとは大きく異なる形態となります。
また、PVCではQRS波と反対方向にST-Tが向く、いわゆる二次性ST-T変化を伴うことが多く、本例でも期外収縮後のST-Tは正常収縮時とは大きく異なっています。
さらに本例では、PVC後に比較的長い休止期を認めます。PVCは通常、洞結節をリセットしないため、洞結節はもとのリズムで興奮を続けます。その結果、典型例ではPVCを挟んだ正常QRS間隔が基本RR間隔の約2倍となる完全代償性休止期を形成します。
したがって、本心電図は洞調律中に出現した心室期外収縮と判断します。
他の選択肢が違う理由
A:心房期外収縮
心房期外収縮(PAC)も予定より早く出現するため、PVCとの鑑別が必要です。
PACでは洞結節以外の心房から早期興奮が発生するため、通常は正常な洞性P波とは形の異なるP′波が予定より早く出現し、その後にQRS波が続きます。
心室内伝導が正常であればQRS幅は狭く、洞収縮時と似たQRS形態になります。
一方、本例では期外収縮の直前に明瞭なP′波を認めず、QRSが著しく幅広く変形しているためPVCが考えられます。
ただし、PACでも変行伝導を伴えば幅広いQRSとなる場合があるため、実際の判読ではQRS幅だけでなく先行P波の有無や休止期なども合わせて判断します。
C:心室性二段脈
心室性二段脈とは、
正常収縮 → PVC → 正常収縮 → PVC……
のように、正常収縮とPVCが1拍ずつ交互に繰り返される状態です。
本例ではPVCを認めますが、PVCとPVCの間に複数の正常洞収縮が存在しています。したがって、PVCではあるものの二段脈という出現パターンではありません。
ここは前の問題とのよい対比になります。
D:2度房室ブロック
2度房室ブロックでは、心房興奮の一部が心室へ伝わらないため、P波が存在するにもかかわらず、その後にQRS波が出現しない現象がみられます。
本例ではQRS波が脱落しているのではなく、逆に予定より早く異常なQRS波が出現しています。したがって房室ブロックではありません。
