難易度 ★☆☆☆
症例
40歳の女性。発熱と動悸を主訴に受診した。12誘導心電図を示す。
12誘導心電図

この心電図の診断は?
○ A:洞頻脈
○ B:心房頻拍
○ C:房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)
○ D:心房粗動
正解 A:洞頻脈
この心電図のポイント
II誘導で陽性、aVRで陰性のP波が各QRSに先行している
解説
本心電図では、心拍数約120回/分の規則正しい頻脈を認めます。QRS幅は狭く、まず「規則正しい上室性の頻脈」と考えて、P波とQRS波の関係を確認することが重要です。
各QRS波の直前にはP波が確認でき、P波とQRS波は1:1に対応しています。さらにP波はII、III、aVFで陽性、aVRで陰性であり、洞結節から正常な方向へ心房が興奮していることを示します。P波の形態およびPR間隔も拍ごとにほぼ一定です。
したがって、洞結節由来の調律を保ったまま心拍数が100回/分を超えている洞頻脈と判断します。
発熱、脱水、貧血、疼痛、運動、不安などによって交感神経活動が亢進すると、洞結節の自動能が高まり洞頻脈を生じます。そのため、洞頻脈を認めた場合には不整脈そのものだけでなく、頻脈を引き起こしている背景を考えることも大切です。
他の選択肢が違う理由
B:心房頻拍
心房頻拍では洞結節以外の心房組織から規則的な興奮が発生します。そのためQRSの前にP波を認めることがありますが、P波の形態や極性が通常の洞性P波と異なることが鑑別の手掛かりになります。
本例では下壁誘導で陽性、aVRで陰性という典型的な洞性P波が各QRSに先行しているため、心房頻拍よりも洞頻脈が適切です。
C:房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)
AVNRTも規則正しいnarrow QRS tachycardiaを呈するため、洞頻脈との鑑別が重要です。
典型的AVNRTでは心房と心室がほぼ同時に興奮するため、逆行性P波がQRSに埋没して見えないことが多く、V1のpseudo r′や下壁誘導のpseudo Sとして認められる場合もあります。
本例では、各QRSの前方に一定のPR間隔をもって洞性P波が存在するためAVNRTは考えにくい所見です。
D:心房粗動
心房粗動が2:1房室伝導となると、心室拍数は典型的には約150回/分となり、規則正しいnarrow QRS tachycardiaを呈するため洞頻脈と紛らわしいことがあります。
しかし、この場合はQRS 1拍につき心房興奮が2回存在し、通常のP波ではなく連続するF波を認めます。本例では各QRSの前に1つずつ洞性P波が存在し、明らかなF波は認めません。

