難易度 ★★★☆
症例
慢性閉塞性肺疾患の既往がある75歳男性。2日前から呼吸困難が悪化し、黄色い痰を伴う咳が出たため救急外来を受診した。発熱はなし。血圧は120/70 mmHg、脈拍数は150 bpm。呼気性喘鳴が認められた。心電図検査を行った。胸部X線検査では慢性閉塞性肺疾患と一致する所見が認められたが、浸潤影はなかった。慢性閉塞性肺疾患の増悪と気管支炎が疑われ、抗生物質とステロイドの漸減投与が開始された。心電図Aは救急外来、心電図Bは呼吸状態の改善が認められた2日後に記録された。
12誘導心電図


この心電図の診断は?
○ A:房室結節回帰性頻拍(AVNRT)
○ B:房室回帰性頻拍(AVRT)
○ C:心房頻拍
○ D:心房粗動
正解 D:心房粗動
この心電図のポイント
① P波の形
② P波のレート
解説
心電図A:心拍数は150回/分で、リズムは整です。 QRS波の持続時間(0.08秒)と形態は正常です。電気軸はⅠ誘導とaVF誘導でQRS波が陽性であり0°〜+90°の間で正常軸です。ただし、肢誘導では低電位が見られ、QRS波の振幅が5mm未満となっています。QT/QTc間隔は正常です(280/440ms)。各QRS波の前にP波があり、PR間隔は一定です(0.14秒)。P波はII誘導とaVF誘導で陰性→陽性に見えるので、洞調律ではないと考えられます。

QRS波の終末に陽性波があり、V1とV2で最も顕著に見られます。この陽性波は、QRS波の前に見られるP波と同じ形態を示しており、P波との間隔が一定なので、これもP波であるとわかります。P波のレートは300bpmです。房室伝導比が2:1でありP波のレートおよび下壁誘導のP波の波形が鋸歯状波であることから2:1心房粗動であることがわかります。

心電図B:リズムは不規則ですが、不規則性にはパターンが見られます。すなわち、短い間隔はすべて同じで、長い間隔も同じです。したがって、これはregularly irregularです。2つの長いRR間隔の間に300bpmのレートで明瞭な心房波が認められます。心房波は、II誘導とaVF誘導で陰性→陽性で基線がなく、連続的に波打つような外観を呈しています。心房波は、形態、振幅、間隔が同じです。この波形形態は、典型的な心房粗動の特徴です。さらに、規則的な心房レートが260bpmを超える心房性不整脈は心房粗動のみです。

心房粗動波とQRS波の関係(PR間隔)には多少のばらつきがあることがわかります。これは順行性潜在伝導の結果であり、房室結節の不応期のばらつきにより房室結節伝導速度が変動するという房室結節の特性です。心房レートが速い場合、一部の興奮は房室結節を伝導しますが、他の興奮は完全にブロックされます。一方、一部の興奮は結節を部分的に通過し(すなわち結節内に隠れ)、結節を部分的に不応期にして、後続の興奮が結節を伝導する速度に影響を与えます。したがって、心房レートが規則的で房室伝導のパターンが安定している場合でも(すなわち房室伝導比が2:1、3:1、4:1)、RR間隔にばらつきが生じる可能性があります。
参考文献
ECG challenge: October 22, 2013. Circulation. 2013 Oct 22;128(17):1924.
ECG Response: October 29, 2013. Circulation. 2013 Oct 29;128(18):2072.

