問題No.18

難易度 ★☆☆☆

症例

70歳男性。健診で脈拍の不整を指摘された。自覚症状はなく、心電図検査を施行した。

12誘導心電図

この心電図の診断は?

○ A:一定のPR間隔をもつP波が各QRS波に先行している
○ B:鋸歯状の心房波が一定の周期で出現している
○ C:P波を明瞭に認めず、RR間隔は不規則である
○ D:3種類以上の異なる形態のP波を認める

正解 C:P波を明瞭に認めず、RR間隔は不規則である

この心電図のポイント

①明瞭なP波を認めないこと

②RR間隔が不規則であること

解説

まず最下段のII誘導を長く観察すると、QRS波と次のQRS波の間隔が一定ではありません。単に「少しずつ長くなったり短くなったりする」のではなく、規則性を見いだせない不規則なRR間隔となっています。この所見は「絶対的不整(irregularly irregular rhythm)」と表現され、心房細動を考える重要な手掛かりです。

次にQRS波の前を確認します。洞調律であれば、通常は各QRS波に先行して一定した形態のP波が認められます。しかし本例では、一定したP波を確認できません。

心房細動では心房内で多数の興奮波が不規則に伝播するため、心房全体がまとまって興奮しません。そのため正常なP波は形成されず、基線には細かな不規則な心房活動である細動波(f波)がみられることがあります。さらに、心房から房室結節へ到達する興奮も不規則です。房室結節はそのすべてを心室へ伝えるわけではなく、伝導可能なタイミングで到達した興奮が心室へ伝わります。このため心室興奮のタイミングも不規則となり、RR間隔の絶対的不整が生じます。

他の選択肢が違う理由

A:一定のPR間隔をもつP波が各QRS波に先行している

これは基本的には洞調律を示唆する所見です。心房細動では明瞭なP波が消失しているため、一定したPR間隔を測定することもできません。


B:鋸歯状の心房波が一定の周期で出現している

これは心房粗動を示唆します。典型的な心房粗動では、規則的に反復するF波(粗動波)がみられ、特にII・III・aVFなどで鋸歯状に観察されることがあります。心房細動では心房活動そのものが不規則であり、規則正しいF波を認めません。

D:3種類以上の異なる形態のP波を認める

これは多源性心房頻拍でみられる特徴です。多源性心房頻拍もRR間隔が不規則になるため心房細動と紛らわしいことがありますが、重要な違いは識別可能なP波が存在することです。異なる心房部位から興奮するため、少なくとも3種類のP波形態が認められます。

P波と細動波(f波)は別物です。ただし、どちらも「心房の電気活動」を反映している点は共通しています。

P波は、洞結節から始まった興奮が右房→左房へと比較的まとまって伝わることで生じる、組織化された心房脱分極を表します。そのため洞調律では、一定した形のP波が規則的に出現します。

一方、心房細動の細動波は、心房内の電気活動が無秩序になった結果として生じる細かく不規則な基線の揺れです。つまり心房細動では、正常なP波が消失 → 代わりに不規則な心房活動(f波)がみられるという関係です。重要なのは、f波を「異常なP波」と考えないことです。

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