難易度 ★☆☆☆
症例
78歳男性。動悸を主訴に受診した。以下の12誘導心電図を認めた。
12誘導心電図

この心電図の診断は?
○ A:洞頻脈
○ B:心房細動
○ C:心房粗動
○ D:発作性上室性頻拍
正解 C:心房粗動
この心電図のポイント
II・III・aVF誘導の鋸歯状波
解説
この心電図で最も特徴的なのは、II、III、aVF誘導に認められる規則正しい鋸歯状の心房波です。この波は通常のP波ではなく、心房粗動に特徴的なF波(粗動波)です。
典型的心房粗動では、心房内を興奮が大きく旋回するマクロリエントリーが形成されます。典型例では三尖弁輪周囲を反時計回りに旋回し、その回路には下大静脈と三尖弁輪の間にある峡部(cavotricuspid isthmus:CTI)が含まれます。
心房興奮は通常250~350回/分程度と非常に速く、正常洞調律のような「P波―等電位線―P波」という形になりません。その代わり、基線が連続的に上下する鋸歯状波となります。
この心電図でも特にII、III、aVFで陰性のF波が連続していることが重要です。典型的な反時計回り心房粗動では、
II・III・aVF:陰性F波
V1:陽性F波
という組み合わせが特徴的です。したがって、この波形は典型的心房粗動(反時計回転)を強く示唆する所見です。
また、心房から生じたすべての興奮が心室へ伝導するわけではありません。房室結節で一部がブロックされるため、2:1、3:1、4:1などの房室伝導を示します。典型的心房粗動では2:1または4:1伝導がよくみられます。
この心電図では、F波に対してQRSが一定の2:1で出ているというより、房室伝導比が変化している心房粗動として捉えるのがよさそうです。そのため、RR間隔にも多少の変動があります。
他の選択肢が違う理由
A:洞性頻脈
洞性頻脈では各QRSの前に洞性P波を認め、P波とP波の間には基本的に等電位線があります。この心電図のような連続する鋸歯状F波は認めません。
C:心房細動
心房細動では有効なP波を認めず、RR間隔が絶対的不整(irregularly irregular)となります。一方、心房粗動では心房興奮そのものは非常に規則的です。この症例ではII・III・aVFで同じ形のF波が一定間隔で反復していることが心房細動との重要な鑑別点です。F波の規則性は心房粗動を診断するうえで非常に有用です。
D:発作性上室性頻拍
AVNRTやAVRTなどの発作性上室性頻拍では、一般に規則正しい狭いQRS頻拍となりますが、このような連続した鋸歯状F波は認めません。
