難易度 ★★★☆
症例
76歳男性。高血圧の既往があり、降圧薬を内服中。定期健康診断のためにかかりつけ医を受診し、疲労感と時折のめまいを訴えた。身体診察では脈拍が遅い以外に特記すべき所見はなく、心電図検査が行われた。
12誘導心電図

この心電図の診断は?
○ A:1度房室ブロック
○ B:2:1房室ブロック
○ C:高度房室ブロック
○ D:3度房室ブロック
正解 D:3度房室ブロック
この心電図のポイント
PP間隔に注意
解説
リズムは規則的で、心拍数は40bpmです。QRS幅は0.12秒です。V1誘導ではRSR′型(←)を認め、I誘導およびV5〜V6誘導では幅広い終末S波(↑)を認めることから、右脚ブロックの波形を呈しています。電気軸は0°〜+90°の範囲にあり正常です。すなわち、右室の興奮遅延を反映する終末S波を考慮してもI誘導のQRS波は全体として陽性であり、aVF誘導でもQRS波は陽性です。また、胸部誘導ではQRS波の電位が低く、各誘導のQRS振幅は10mm未満です。QT/QTc間隔は、QRS幅の延長を考慮すると正常範囲です(それぞれ520/425msおよび500/410ms)。
P波(+)は確認できますが、P波とQRS波との間に一定の関係は認められず、房室解離を呈しています。房室解離を生じる代表的な機序として、心房レートが心室レートより速い完全房室ブロックと、心房レートが心室レートより遅い場合にみられる促進性の下位ペースメーカ調律があります。本例では心房レートが90bpm、心室レートが40bpmであり、心房レートの方が速いことから、完全房室ブロックと判断できます。補充調律はQRS波がnarrowであり接合部性です。
最初の6つのP波ではPP間隔(└┘)は一定で、心房レートは約90bpmです。しかし、7〜9番目のP波ではPP間隔が延長しています(↔)。さらに、4〜6番目のQRS波に続いて陰性の波形(^)が認められます。
これらは心室から心房へ逆行性に伝導したP波であり、この逆行性興奮によって洞結節がリセットされるため、その後の洞性P波の出現が遅れ、PP間隔が延長しています。
完全房室ブロックでは順行性の房室伝導が途絶していても、逆行性、すなわち室房伝導が保たれていることがあります。このような順行性伝導と逆行性伝導の違いには、以下のような機序が考えられます。
- 房室結節の順行性伝導と逆行性伝導で電気生理学的特性が異なる。
- 房室結節内に二重伝導路が存在する。
- 主として逆行性に伝導する潜在性副伝導路が存在する。
参考文献
ECG Challenge: June 23/30, 2015. Circulation. 2015 Jun;131(25):2232.
