難易度 ★☆☆☆
症例
308歳男性。健康診断で脈拍が遅いことを指摘された。自覚症状はない。12誘導心電図を示す。
12誘導心電図

この心電図の診断は?
○ A:洞徐脈
○ B:1度房室ブロック
○ C:洞停止
○ D:接合部補充調律
正解 A:洞徐脈
この心電図のポイント
II誘導で陽性・aVRで陰性のP波がすべてのQRS波に先行
解説
本心電図では、心拍数約40回/分の規則正しい徐脈を認めます。
徐脈の心電図では、まず「心拍数が遅い」という事実だけで診断せず、P波がどこにあり、QRS波とどのような関係にあるかを確認します。
本例では各QRS波の直前にP波が認められ、P波とQRS波は1:1に対応しています。また、P波の形態は各拍でほぼ一定しており、II誘導で陽性、aVR誘導で陰性です。これは洞結節から発生した興奮が正常な方向に心房を伝播していることを示す、典型的な洞性P波です。
したがって、
洞性P波 + P:QRS=1:1 + 心拍数60回/分未満
であることから、洞徐脈と判断します。
洞徐脈は健常者にもみられ、特に若年者、運動習慣のある人、睡眠中などでは迷走神経緊張によって心拍数が40~50回/分程度まで低下することがあります。一方、症状を伴う高度徐脈では洞結節機能不全や薬剤などの原因も検討する必要があります。
他の選択肢が違う理由
B:1度房室ブロック
1度房室ブロックでは、すべてのP波が心室へ伝導するためP波とQRS波は1:1です。この点だけを見ると本例と似ています。
しかし診断のポイントはPR間隔の延長で、成人では一般にPR間隔が200 msを超える場合に1度房室ブロックとされます。
本例では明らかなPR間隔の延長は認めません。心拍数が遅いこと自体は1度房室ブロックの診断基準ではないため、洞徐脈が適切です。
C:洞停止
洞停止では洞結節からの興奮形成が一時的に途絶えるため、本来出現するはずのP波が突然出現しなくなり、それに伴ってQRS波も欠落して長い休止期が生じます。
本例ではP波が規則的に出現し、長い休止期も認めません。単に洞結節の興奮頻度が低下している洞徐脈であり、洞停止とは異なります。
D:接合部補充調律
接合部補充調律は洞結節からの刺激が著しく遅くなった場合などに、房室接合部が代わってペースメーカーとなる調律です。一般的な心拍数は40~60回/分程度であり、心拍数だけで見ると洞徐脈と非常によく似ています。
鑑別で重要なのがP波です。接合部調律では洞性P波がQRSの前に規則的に存在せず、逆行性P波がQRSの直前・内部・直後にみられることがあります。
本例ではII誘導で陽性の洞性P波が毎回QRSに先行しているため、接合部補充調律ではありません。
