難易度 ★☆☆☆
症例
76歳男性。失神を主訴に来院。健康診断で脈の不整を指摘され、12誘導心電図を記録した。自覚症状はない。
12誘導心電図

この心電図の診断は?
○ A:洞不整脈
○ B:心房細動
○ C:心房粗動
○ D:多源性心房頻拍
正解 B:心房細動
この心電図のポイント
P波とRR間隔
解説
この心電図でまず注目したいのは、RR間隔が一定ではなく、完全に不規則(irregularly irregular:絶対性不整)であることです。特に最下段のII誘導のリズムストリップを見ると、QRS波の出現間隔に一定の規則性がありません。
さらに、各QRS波の前に一定した形のP波を認めません。代わりに基線には細かな不規則な揺れがみられ、特にV1誘導では細動波(f波)を観察しやすい所見です。心房細動では心房が無秩序に興奮するため、洞調律のような規則正しいP波が形成されません。
心房から房室結節へ到達する興奮も不規則となり、そのうち房室結節を通過できた興奮だけが心室へ伝導します。その結果、心室興奮であるQRS波も不規則なタイミングで出現し、RR間隔が絶対的不整となります。
したがって、この心電図では、
- RR間隔が絶対的不整
- 明瞭なP波を認めない
- 基線に不規則な細動波(f波)を認める
という3点から、心房細動と診断します。
他の選択肢が違う理由
A:洞不整脈
洞不整脈ではRR間隔は変動しますが、洞結節から規則的に興奮が始まるため、各QRS波に先行して同じ形のP波を認めます。この心電図では明瞭なP波がなく、単なる洞不整脈では説明できません。
C:心房粗動
心房粗動では鋸歯状のF波(flutter wave)がみられます。房室伝導比が変化すればRR間隔が不規則になることもありますが、心房活動そのものには規則性があります。したがって「不整だからAF」と即断せず、P波/F波/f波を見ることが重要です。
D:多源性心房頻拍
多源性心房頻拍(MAT)もRR間隔が不規則になるため心房細動との鑑別が重要です。しかし多源性心房頻拍では、形の異なるP波であっても識別可能なP波が存在します。一方、本例では一定したP波を認めず、不規則な心房活動が持続しています。
