問題No.33

難易度 ★☆☆☆ 

症例

78歳男性。数日前から全身倦怠感とふらつきを自覚していた。今朝、立ち上がった際に強いめまいが出現したため受診した。来院時の脈拍は約70回/分であった。12誘導心電図を示す。最も考えられる診断はどれか。

12誘導心電図

問題No.33

この心電図の診断は?

A. 1度房室ブロック

B. 2度房室ブロック(ウェンケバッハ型)

C. 2度房室ブロック(モビッツII型)

D. 3度房室ブロック(完全房室ブロック)

正解 D. 3度房室ブロック(完全房室ブロック)

この心電図のポイント

P波とQRS波がそれぞれ規則正しく出現しているのに、両者の位置関係が一定しない

解説

 この心電図では、P波とQRS波がそれぞれ独立した周期で出現し、両者の間に一定の伝導関係が認められません。 このような状態を房室解離と呼びます。

本例では、心房興奮が心室へ伝導せず、補充調律によって心室が興奮していると考えられるため、3度房室ブロック(完全房室ブロック)が最も疑われます。

① P波とQRS波が独立して出現する

正常な洞調律では、洞結節から発生した興奮が心房を伝わり、房室結節、ヒス束、脚、プルキンエ線維を経由して心室に伝導します。そのため、通常はP波の後に一定のPQ間隔(PR間隔)をおいてQRS波が出現します。

正常な洞調律では、洞結節から発生した興奮が心房を伝わり、房室結節、ヒス束、脚、プルキンエ線維を経由して心室に伝導します。そのため、通常はP波の後に一定のPQ間隔(PR間隔)をおいてQRS波が出現します。

しかし、完全房室ブロックでは、心房から心室への興奮伝導が完全に途絶えているため、P波とQRS波が独立して出現します。

しかし、完全房室ブロックでは、心房から心室への興奮伝導が完全に途絶えているため、P波とQRS波が独立して出現します。

本例でも、P波とQRS波の位置関係が拍ごとに変化しており、PQ間隔が一定ではありません。P波がQRS波の直前に出現することもあれば、ST部分やT波に重なっていることもあります。このように、P波とQRS波の間に一定の関係が認められないことが重要な所見です。

本例でも、P波とQRS波の位置関係が拍ごとに変化しており、PQ間隔が一定ではありません。P波がQRS波の直前に出現することもあれば、ST部分やT波に重なっていることもあります。このように、P波とQRS波の間に一定の関係が認められないことが重要な所見です。

② 心房と心室がそれぞれ独立したリズムを形成する

完全房室ブロックでは、心房は洞結節からの興奮によって規則正しく収縮しますが、その興奮は心室へ伝わりません。そのため、心室は房室接合部や心室内の刺激伝導系などから発生する補充興奮によって収縮します。

完全房室ブロックでは、心房は洞結節からの興奮によって規則正しく収縮しますが、その興奮は心室へ伝わりません。そのため、心室は房室接合部や心室内の刺激伝導系などから発生する補充興奮によって収縮します。

この結果、心房と心室がそれぞれ独立したリズムを形成します。一般に、完全房室ブロックでは心房拍数が心室拍数を上回ります。つまり、PP間隔の方がRR間隔よりも短くなります。

この結果、心房と心室がそれぞれ独立したリズムを形成します。一般に、完全房室ブロックでは心房拍数が心室拍数を上回ります。つまり、PP間隔の方がRR間隔よりも短くなります。

ただし、房室解離は完全房室ブロックだけでなく、房室接合部調律や心室調律などでも認められるため、房室解離のみで完全房室ブロックと断定することはできません。診断には、心房から心室への伝導が認められないことを確認する必要があります。

③ QRS波の幅から補充調律の起源を推測する

完全房室ブロックでは、補充調律の発生部位によってQRS波の幅や心室拍数が異なあります。

補充調律房室接合部補充調律心室補充調律
主な起源房室接合部付近心室内の刺激伝導系など
QRS幅通常は狭い通常は広い
心室拍数約40~60回/分約20~40回/分
調律比較的安定不安定になりやすい
完全房室ブロックでは、補充調律の発生部位によってQRS波の幅や心室拍数が異なあります。

本例ではQRS波が比較的狭く、心室拍数は約70回/分であることから、房室接合部付近またはヒス束近傍を起源とする補充調律が考えられます。ただし、心室拍数やQRS幅だけで補充調律の正確な起源を断定することはできません。

④ 完全房室ブロックの臨床症状

完全房室ブロックでは心室拍数の低下により心拍出量が減少し、脳や全身への血流が不足することがあります。その結果、めまい、ふらつき、全身倦怠感、息切れ、失神などの症状が出現します。特に、徐脈によって一過性の脳血流低下が生じ、突然意識を失うことをアダムス・ストークス発作(Adams–Stokes attack)と呼びます。症候性の完全房室ブロックでは緊急評価が必要であり、可逆的な原因がない場合には恒久的ペースメーカー植込みが基本的な治療となります。

他の選択肢が違う理由

A. 1度房室ブロック

1度房室ブロックでは、PQ間隔が0.20秒を超えて延長しますが、すべてのP波が心室へ伝導します。そのため、P波とQRS波は1:1の関係を保ちます。本例ではP波とQRS波が独立して出現しているため、1度房室ブロックではありません。

B. 2度房室ブロック(ウェンケバッハ型)

ウェンケバッハ型ではPQ間隔が徐々に延長した後にQRS波が脱落します。脱落後はPQ間隔が短縮して房室伝導が再開します。本例ではこのような周期的なPQ間隔の延長や房室伝導の再開が認められません。

C. 2度房室ブロック(モビッツII型)

モビッツII型では伝導するP波のPQ間隔が一定のまま突然QRS波が脱落します。心房から心室への伝導が一部保たれていることが特徴です。本例ではP波とQRS波に一定の伝導関係が認められないためモビッツII型とは異なります。

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